「職員紹介」緩和ケア認定看護師

2025年9月30日

看護部 緩和ケア認定看護師 木戸内 典子

緩和ケアは患者様とご家族の人生に寄り添う医療

★看護師をめざそうと思った理由、緩和ケアに関心を持ったきっかけについてお聞かせください

昔から漠然と「生涯役に立つ資格を取得したい」「専門職に就きたい」と思っていました。高校生のとき、卒業後の進路を決める段階でいろいろな職種や資格について調べていくうちに「看護師になりたい」と思うようになり、将来のビジョンが徐々に明確になってきました。

看護師の国家資格を取得し、急性期病院に勤務していたときのことです。担当していた患者様が抗がん剤治療を受けていたのですが、助かることなく命を落とされました。その患者様が死の恐怖や副作用の苦しさに耐えながら病魔と闘っていた姿に直面してきただけに、やりきれない気持ちが募り、終末期の患者様とどのように向き合うべきかを考えるようになりました。

このときの経験を機に、積極的治療が望めなくなった患者様の身体的・精神的苦痛を和らげて、残された時間を安寧にすごしていただく緩和ケアに関心を抱くようになったのです。

★緩和ケアを実践する際に心がけていること、やりがいについてお聞かせください

緩和ケアについて学んでいくうちに、やがて「住み慣れた自宅で家族に見送ってもらいたい」と願う患者様に寄り添いたいという思いが強く芽生えてきました。ちょうど国の医療政策が「病院から在宅へ」とシフトチェンジされる時期と重なっていたことから、時流にも後押しされて病院看護師から訪問看護師に転身しました。

緩和ケア認定看護師の資格を取得して以来、在宅を中心にこれまで多くの患者様の緩和ケアに携わってきました。

緩和ケアは患者様の苦痛を取り除くことはもちろんですが、ご家族のメンタル面のサポートも不可欠です。患者様を看取った後、残されたご家族のなかには深い悲しみや喪失感からなかなか抜け出すことができなくなるといったケースも少なくありません。亡くなった患者様を偲ぶ茶話会などを通じてご遺族のグリーフケアを行うことも緩和ケアの大切な役割です。

患者様が穏やに終末期をすごされて、きれいなお顔で旅立たれた後、ご家族から「あなたに会えたことに感謝します」「私のときもよろしくね」とお声がけいただけると、「緩和ケアに従事してよかった」と心から思えます。

★南港病院グループでは、今後どんなことにチャレンジしたいですか?

在宅医療の現場で多くの患者様との出会いと別れを通じて得た学びを活かし、緩和ケア認定看護師としてのさらなるステップアップを図りたいと考えた私は2025年7月に南港病院に入職、再び病院看護師に復帰する道を選択しました。

当院は急性期から回復期、慢性期、在宅に至る幅広い医療をトータルに担っています。さらに法人グループには特別養護老人ホームやグループホームといった複数の入所施設を有し、多職種がチーム力を発揮しながら医療・介護のシームレス・ケアに取り組んでいることにも魅力を感じました。

さらに当法人グループが提唱するユマニチュードも、緩和ケアにおいて重要なコミュニケーションツールだと感銘を受けました。

現時点では病棟での業務が中心ですが、今後は法人グループ内に緩和ケアの必要性やノウハウの周知を図っていきます。

看護師のなかには看取りの経験が浅い人もいます。このような人たちにも、患者様の死としっかりと向き合うことによって得られるものや、緩和ケアのやりがいなどを啓発していきたいと考えています。

また、病院だけにとどまらず、グループ内の特別養護老人ホームやグループホームを横断し、介護従事者の方々にも施設での緩和ケアから看取りに至るまでの知識や技術を伝えていくことも視野にあります。

緩和ケアは患者様の病気だけでなく、人生そのものに寄り添う医療です。

理想のエンディングを迎えていただくためにACPの普及にも力を注ぎ、緩和ケアの主役である患者様とご家族に残された時間を幸せにすごしていただけるようサポートいたします。


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